オフまとめ ⑥ ヴィック・ビーズリー

 この1週間ほどなんやかんやありまして書く予定だったことが何もできないままファイナルカット直前に。とりあえずこれだけはやっておきたかった今年のドラ1様について。思い入れが強すぎてクッソ長くなってしまいました。


ヴィック・ビーズリーJr. DE/OLB #44 (6-3 246lbs) 

 ご存知今年のファルコンズドラ1(全体8位)。44という変わった背番号は今年からLBに付けることが許された40番台で、ファルコンズに指名された8位という数字(4+4=8)を意識したもの。


経歴

 本名ヴィクター・ビーズリーJr.彼の出身はアトランタから車で北へ1時間ほどの位置にあるジョージア州アデアーズビルという小さな町。
 高校時代はアスリートとして地元で知らない者がいないほどの有名人。フットボールでのこの頃のメインポジションはRBで守備時にはLB(非パスラッシャー)としてもプレイ。州のオールスターにも選ばれ、数多くの名門大からの勧誘の中からクレムゾン大を選択。順風満帆なアスリート人生でしたが、大学入学後のドラフトまでの道のりは決して平坦な道ではありませんでした。
 クレムゾン大のHCダボ・スウィーニーはビーズリー以前に同大が輩出した二人のトップ10指名選手と比較して「CJスピラーやサミー・ワトキンスはここに来た時から特別だった。でもヴィックはそうじゃなかった」と言います。

 まず入学直後、突然TEへのコンバートを言い渡されます。これは彼のサイズや身体能力を一番発揮できるポジションはどこかとコーチ陣が話し合った結果でした(もともとリクルート時もアスリートとしては一流でしたが、RBやLBとしての評価は決して高くなかったそうな)。ビーズリーはこれを素直に受け入れますが、全く経験のないポジションであることに加えドウェイン・アレンという大エースがいたため、1年目は赤シャツを着て過ごすことに決定。

 ようやく試合に出れる2年目の1年生シーズン(今更だけど日本人にはこのシステムほんとにややこしいですね)でしたが、開幕前にTEからLBへの再コンバート命令。1年間勉強してきたことが無駄になる再コンバートですが、これも素直に受け入れました。
 この年はほぼスペシャルチームでの出場で、公式スタッツには1タックルという数字だけが残っています。

 そして迎えた3年目のシーズン、入学以来3年連続3度目となるDEへのコンバート指令が下されます。非常に物静かで練習中などに嫌な顔をすることがほとんどないというビーズリーですが、この時は精神的にもかなりきつかったらしく「正直に言えばもうポジションは変わりたくなかったよ、僕はLBというポジションが好きだったし、一つのポジションで練習を続けることは大事なことだから」と後に語っています。とはいえそれでもコンバートを了承。そしてこのコンバートが決定的な転機となりました。
 3点スタンスの経験すらなかったというビーズリーは開幕オーバーン戦でいきなりのサックを挙げると、その後もバックアップとして限られたスナップ数にもかかわらず水を得た魚のようにQBへのプレッシャーを与え続け、シーズントータル8サックを記録。大学入学3年目にしてついに自分のポジションを見つけました。

 スターターに任命された続く3年生シーズンでは更なる飛躍を遂げハイペースでサックを量産。レギュラーシーズン12試合で12サック、4ファンブルフォースの大活躍でオールアメリカのファーストチームに選出。更にオレンジボウルのオハイオ州立大戦でも1サックを含む大活躍でチーム初のBCSボウルゲーム勝利に貢献。名実ともに押しも押されぬトッププレイヤーとなりました。またこの時期それまで220ポンドたらずだった体重も10ポンド増量しています。
 当然ながらアーリーエントリーの話もあり、もしかしたら1巡、遅くとも3巡指名は堅いと言われていましたが「まだやり残したことがあるんじゃないか」というHCの言葉を受けシニアシーズンのプレイを決意。コンバートの件といい本当に素直ですねこの人。

 入学5年目、大学生活最後の2014シーズンも勢いは衰えることなく開幕から怒涛の6試合連続サックをあげる強烈なスタート。途中やや失速しましたがそれでもトータル12サックを記録し2年連続のオールアメリカファーストチームとともに、ACCのディフェンシブプレイヤーオブザイヤーも受賞。入学からのトータルサック数も、故ゲインズ・アダムスらが持っていたそれまでの学校記録の28サックという数字を大きく塗り替える33サックを記録しました。
 また個人成績だけでなくチームとしても、伝統的にオフェンスのチームであるクレムゾン大ですが、この年は平均喪失ヤーデージで全米1位とビーズリー率いるディフェンスの力で10勝3敗という成績を残しています。


コンバイン

 と、エントリー回避の賭けに完全勝利し自身の価値を大きく高めたビーズリーでしたが、それでもドラフト上位候補、特に花形ポジションである4-3DEとして見た場合彼の能力を疑問視する声は少なくありませんでした。
 批判の声を一言でまとめるなら「サイズ不足のノーパワーでランを守れない」というもの。シニアシーズンは公称6-3、235ポンドとしてプレイしていましたが、多くの専門家は実際は6-2、225ポンド程度だろうと見ており、4-3DEとしては致命的にサイズ、パワーが足りないと言われていました。
 そしてそんな批判も残る中で始まったコンバインでビーズリーは周囲の度肝を抜くことに。

 まずは小手調べの身体測定。身長が公称通り6-3あったのはいいとして、体重が246ポンドにまで増量されていたのは少なからず驚きました。後にスウィーニーHCが語ってましたが、ビーズリー自身も体重が批判対象になってることは理解しており、シーズン終了後の2014年末から、大学のウェイトルームで専属のコーチとともにバルクアップに取り組んだそうです。
 それでもNFLでは「軽量パスラッシャー」の範疇とはいえ、2,3ヶ月で10ポンドのバルクアップ(11月に測った時は235ポンドだったとのこと)というのは簡単な覚悟でできることではないわけで、プロ入りに向けての意識の高さが伺えます。

 次に行われたのがベンチプレス。しつこいですがサイズとともにパワーが大きな弱点と言われていたビーズリーにとっては大きな課題である種目。そこでビーズリーは35回という記録をたたき出します。
 これはパワー自慢のDTの中でもトップクラスの選手の数字。去年のアーロン・ドナルド(35回)やヘッグマン(31回)今年で言えばダニー・シェルトン(34回)などが比較対象。エッジラッシャーで言えば去年のクラウニーが21回、今年の全体3位のダンテ・ファウラーが19回だったと言えば、軽量級のビーズリーの35回と言う数字がどれほど異常か分かるんじゃないかと思います。なお当然今年のパスラッシャーの中ではトップ、全体でも3位タイでした。
 ということで、ベンチの回数イコール試合におけるパワーというわけではないとはいえ、単純な腕力という点に関して言えば弱点どころの話じゃないということが明らかになりました。

 しかしこの結果を受けてもビーズリーに対して懐疑的な声は完全には消えません。「なるほど体重を増やし、パワーも付けたのは分かった。でもその結果スピードが失われたなら意味がないぞトランクス。」ということで246ポンドの身体で満足に動けるのかということが試されることに。

で、その結果が以下。

40ヤード走 4.53秒 (ポジション1位)
20ヤードシャトルラン 4.15秒 (ポジション3位)
3コーンドリル 6.91秒 (ポジション3位)
垂直跳び 41インチ (ポジション3位)
立ち幅跳び 10’10 (ポジション3位)

 はい、というわけで参加した全種目でトップクラスのパフォーマンスを披露し、バルクアップの悪影響という疑惑を完全に払拭することに成功。更にその後のポジションドリルも素晴らしい内容で、このコンバイン最大の勝利者とも言われる結果となり、文句なしの上位指名候補の座を確保しました。



プレイスタイル

 スタンディングからラッシュをかけたりカバーに回ることもありますが、3点スタンスからのエッジラッシュが基本形。オフェンスからみて左側(いわゆるブラインドサイド)にセットするケースが多いですが時々逆サイドにもセットしてます。

 最大の武器は圧倒的な初速の速さ。スナップ開始から誰よりも早く動き始め、対面するOTを大外からスピードで一気に置き去りにする形でサックを量産してきました。
 しかし技術皆無の大外まくり一本槍というわけでは決してなく、外に意識を集中させてからの内への切り込みやスピンムーブでもサックを記録してます。ただブルラッシュは苦手、というかそもそもほとんど見せてない。

 最大の弱点はファーストステップでOTを抜けず、がっちり掴まれた時にそのままノンファクターになること。ランディフェンスが弱点と言われているのもブロッカーに捕まってから抜けらないケースが多いためでしょうね。
 ただビーズリーサイドにランを続ければ勝てるみたいな意見も見ますが、私が見た範囲ではそういう試合はありませんでした。そもそもランに対する反応自体はかなり良い方だと思います。

 またドラフト直後にインタビューで「プロで改善しなければいけない事は何か」と問われた時には、「最後までプレイを緩めないこと」と応えています。確かに逆サイドのランプレイなどで気を抜いているシーンは時々見受けられました。

 ちなみに私が見た中でビーズリーに最大級の賞賛を送っており、個人的にも一番賛同できる内容だったのがこちらの記事。これ書いたホワイトさんは元NFLのDLでNYJでルーキーのエイブラハムと同僚だった経験もあるそうなんですが、そのプロ入り時点でのエイブラハムとビーズリーを比較してこう表現してます。
”Vic Beasley is John Abraham with a little better pass rush technique coming out. ”



キャラクター

 コーチやチームメイトなど彼をよく知る人間のビーズリー評はほぼ完全に一致しており、一言で言えば「驚くほど物静かで真面目な好青年」。
 彼と同期で入学したとある選手は「オレ達新入生はしょっちゅうパーティーを開いていたんだ。でもヴィックは誘っても決して参加しようとせず、自室に一人で残ることが多かった。最初はつまらない奴だと思っていたけど、彼の生き方が正しかったことがよく分かるよ。彼は努力し報われた。素晴らしいことだよ」と証言しています。
 そして上述したように3度のコンバートや大学残留を受け入れたことからも分かるようにもの凄い素直。ちなみに残留したのには大学をきちんと卒業したかったというのも大きな要因だったみたいです。
 4年次には周囲の声を受けてチームキャプテンにも就任。自分から行動を起こすリーダータイプでは決してないのですが、評判は上々だったみたいです。
 コンバインに向けての肉体改造からは、目的を定め、そこに向かってひたむきに努力できる姿勢がうかがえます。
 また内向的な性格にも関わらず、ファルコンズに入団してからはtwitter上でクイズ大会などを開催し優勝者に商品をプレゼントするなど、積極的にファンと交流してます。

 うーん、なんというか本当に好青年ですね。あ、あと大事なのは生粋のファルコンズファンということ。私が知っているファルコンズファンはみんな良い人なのでビーズリーも間違いなく良い人です。



ファルコンズにおける立ち位置

 ここ2年のディフェンスの黄金パターンは「序盤はランを止めてサードダウンを作る→しかしサードダウンでパスが全くとめられない→ドライブが延々と続いてディフェンス全体が疲弊→大崩壊」というものでした。
 そう、実はどん底ディフェンスといってもサードダウンの状況は相当な数作っていたんです。そしてサードダウンでもトゥルーファントをはじめDB陣はかなりの時間を稼いでいた、にもかかわらず止まらないのはとにかくパスラッシュが皆無だったから。おそらくチーム最高のパスラッシャーはバビノーでしたが、こともあろうに3-4DEという彼の力が全く発揮できないポジションに置かれていたことも拍車をかけました。
 逆に言えば、全盛期エイブラハム級のパスラッシャーが一人でもいればディフェンスは(引いてはチーム成績も)全く違う結果になっていたと思います。

 で、ビーズリーに求められるのはその「一人でディフェンスを変える」という大仕事です。チームの体制が変わり選手もスキームも激変したとはいえ、昨シーズン最も足りなかった穴を埋めるという立場には変わりありません。

 スキームという意味ではクイン就任以来ずっと言われているLEOディフェンスのLEO要員を担うことになります。ここで細かく解説する余裕はないですけど簡単にいえば「パスシチュエーションでブラインドサイド大外にセットしてQBを仕留める」のが主な仕事で、彼の本領が最も発揮できる役割でもあります。時にはOLBとしてもプレイするケースもあるでしょうけど、プレシーズンはほぼDEとしてプレイしてました。
 全体8位に求められるのは文字通りディフェンスの顔となることです。


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 いやー、本当長くなってしまいましたがこれでも大分削っているという事実。これでバストだったり大怪我したらしばらく寝込みます。
 オフまとめはここまでで、すみませんが他のドラフティについては紹介は省略ということで。多分明日は53ロスターの紹介記事をあげると思います。
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