2016シーズン振り返り ダン・クイン

 時間の関係でスーパーボウル展望は中止となりました。一人キーマンを予想するならヘッグマンで。



HCダン・クイン

 HC就任2年目にしてスーパーボウル進出。この結果以外何か語ることがあるだろうか、いやない。終わり。
 と終わらせれば楽なんですけどいくらなんでもいくらなんでもですので、今日に至るまでのクインのHCとしての功績を二つのキーワードをもとに語ってみようと思います。

"Fast and physical"
 ポジションまとめの時にもちょろっと出てきましたね。クインが就任時から「私がこのチームの選手たちにまず求めるもの」として掲げているモットーです。

 このモットーによって、選手もコーチも明確な目標を持って「より速く」「よりフィジカル」な選手を目指し日々の練習に取り組むことができる、といったような効果が期待できるかもしれませんが、これはまあ小学校の「今週の標語」みたいなもんです。多少の効果はあるかもしれませんが、それだけで急に強く慣れれば苦労はしません。

 そんな精神論的な話ではなく、もっとずっとはっきりとした形で"Fast and physical"という言葉はチームに大きな影響を及ぼしたのです。

 リチャード・スミスの記事でも触れたように、クイン就任時のファルコンズのディフェンスロスターはそれはもうひどい有様でした。圧倒的なスター不足に加えそれ以上に深刻なデプスの貧弱さ。フロントセブンなんて辛うじてリーグ平均レベルに届いている選手は最年長のバビノーくらい、という焼け野原としか表現しようがない状況でした。
 そんな状況のデプスを再生するための一番理想的な方法はドラフトで当たりを引き続けることですが、そんな口で言うのは簡単だけど実現するのはほとんど不可能に近いことを成し遂げたのがこの2年間のドラフトでした。

 クイン就任以来指名したディフェンス選手を順番に上げていくと

2015
DEヴィック・ビーズリー(1-8)
CBジェーレン・コリンズ(2-42)
DTグレイディ・ジャレット(5-137)
CBアキーム・キング(7-249)
2016
Sキアヌ・ニール(1-17)
LBディオン・ジョーンズ(2-52)
LBデヴォンドレ・キャンベル(4-115)

という計7人。このうち今シーズン開幕前にIR入りしたキングを除いた6人全員が現在のディフェンスの主力としてスタメンを担っているというほぼ的中率100%の大当たり。ぺんぺん草も生えない焼け野原がわずか2年でタレントだらけになったというのは前のエントリでも言ったとおりです。ではなぜこんなドラフトが出来たかと言えば"Fast and physical"のモットーこそが成功の秘訣だったという驚きの事実。
 クインは就任早々にGMやスカウト陣全員に"Fast and physical"の重要性を訴え、この二つの条件を満たしていると感じる選手がいたらたとえ技術的に未熟でも入念にスカウティングをするように要求したというのです。そしてスカウトがこれはと思う選手がいたら「DQ's guy」(DQはダン・クインの愛称)としてリストアップし、クインやディミトロフも一緒にビデオを見てスカウティング作業を行ったといいます。
 そうしたふるいにかけられた末に指名されたのが上記の面々。だからこそ全員が「クインのファルコンズ」にとって最も重要な"Fast and physical"という素質を満たしており、1,2年目から結果を残すことができているということです。

 特に16ドラフトで指名された3人はいずれも巷の評価ではリーチといわれておりましたが、おそらく"Fast and physical"の選別を経た後のファルコンズのボードにおいてそれぞれ最上位だったんだと思います。できることならいつかこの時のファルコンズのビッグボードを見てみたいです。きっと他チームのボードとは全く違う順番で「DQ's guy」が並んでいたことと思います。

 クインは"Fast and physical"というシンプルで分かりやすいモットーを打ち出すことで、選手やコーチだけでなく、GMから末端のスカウトに至るまで共通の価値観を持たせることに成功したのです。これによってチームに本当に必要な選手を取捨選択できるようになり、この奇跡的な2年間のドラフトを達成したわけですね。HCとGMとスカウトという3者が共通の目標に向かうことができる、そんな効果が"Fast and physical"という言葉にはあったのです。


"Brotherhood"
 直訳すると兄弟愛、家族愛といった意味の言葉です。

 2016ドラフトが終わったあたりから、突然クインはこの"Brotherhood"という言葉を事あるごとに使っていくようになりました。
(下はツイッターで確認できるクインが初めて"Brotherhood"を使ったつぶやき)


 クインは、選手たちが互いに家族のように信頼しあい、助け合っていくことの重要性を良く分かっていました。だからこそその意識を共有させるため、"Brotherhood"という言葉をくどいくらいに積極的に使い、選手たちの間にこの言葉を浸透させようと試みました。

 またクインは言葉だけでなく非常にユニークな形で"Brotherhood"の強化に努めました。ロッカールームの中央にあった共有ロッカーをとっぱらい、そこに卓球台を1台置き、いつでも選手間で卓球ができるようにしたのです。
 なんだそんなこと、と鼻で笑われそうな話ですが、この卓球台は想像もしないほど大きな効果を生み出しました。もともとNFL選手なんていうのは世界トップクラスに負けず嫌いなスーパーアスリートばかりですから、初めは遊びのつもりでも次第に体を使った勝負事である卓球に熱中するようになり、毎日の練習の合間には白熱の卓球勝負が繰り広げられるようになりました。
 実は昨年までロッカールーム内では基本的にみな一人でスマホをいじったり音楽を聴いており、選手間の談笑などはロッカーが隣同士の選手が少しするくらしかなかったそうです。
 それが卓球台を導入してからはそれまでほとんど会話がなかった他ポジション間の選手同士も活発に交流を行うようになり(基本的にロッカーはポジションごとに並んでる)、卓球台が埋まっていてもみんなで卓球観戦やトランプなどで遊ぶようになり、1年前とは比べ物にならないほど活気に満ち溢れたロッカールームになったそうです。
 その後選手たちの要望で卓球台は1台増え、それでも足りないともう1台増え、今では3台の卓球台で日々熱戦が繰り広げられているんだそうです。

 こうした交流の中でファルコンズの選手たちは"Brotherhood"を高め合い、月並みな言い方ではありますが「強い絆で結ばれたチーム」となりました。
 その成果は試合中でもはっきりと現れています。たとえばトゥルーファントがIR入りしてからのアルフォードをはじめとした残りの選手たちの奮起の姿。たとえばフリーマンとコールマンが同ポジションのライバルでありながら互いの活躍を心から喜び合う様子。そしてOLの結束とライアンとの信頼関係などなど。今年のファルコンズはクインを父親とした大家族のように互いに信頼し合い、支え合うチームになっているような印象です。

 1年足らずでクインファルコンズを象徴する言葉となった"Brotherhood"。この言葉の下に結束しているファルコンズは本当に強いチームになったと思います。

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 この2年でクインはファルコンズを"Fast and physical"な選手たちで染め上げ、"Brotherhood"で結ばれた「クインのファルコンズ」へと育て上げ、スーパーへと導いてくれました。未だにスミッティも素晴らしいHCだったと確信していますが、それでも2年前クインを選んで本当に良かったと思います。
 あとはクインとファルコンズを信じ、勝利を祈るだけです。

In Brotherhood!

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